「男性で育休をとった前例はない」
所属長にそう言われたことが、病院を辞めるきっかけでした。
はじめまして。辰馬(たつま)と申します。地方都市の総合病院で9年9か月、薬剤師として働きました。2023年12月に退職し、2024年3月に開業届を出してフリーランスになりました。当時34歳、4歳と1歳の子どもがいました。
いまも現場に立っています。調剤薬局1件と、病院と老健を運営する法人1件に業務委託で入り、それぞれ週1〜2回です。あわせてIT法人の代表として、医療と介護と福祉の現場にAI導入やDXの支援をしています。
このサイトは、その過程で調べたことと、うまくいかなかったことを、同じ道を通ろうとしている薬剤師のために置いておく場所です。
病院を辞めた理由
この3つは別々の問題です。どれかひとつだけなら、たぶん残っていました。
育休の交渉でつまずいた
妻が第2子を妊娠しているとき、育休を取りたいと所属長に相談しました。返ってきたのは、次のような言葉です。私の記憶に基づく再現であり、一言一句の記録ではありません。
- 人数が少ないから難しい
- 男性で育休をとった前例はない
- 産休、育休を取りたいなら他に行った方がいいのではないか
同じ時期に産休と育休に入る女性薬剤師がいたことも持ち出され、人数的に厳しいのであなたは我慢してほしい、とも言われました。
交渉の末、約7か月の育休を取得できました。制度としては通ったわけです。それでも、交渉の過程で生まれた不信感は消えませんでした。
復帰した後に妻が消耗した
復帰するとすぐに当直と日直が入りました。月に複数回、妻が幼い子2人をひとりで見る日ができます。
妻は精神的に消耗していきました。育休を取ってまで守ろうとしたものが、復帰した時点で元に戻っていたことになります。
復帰から約6か月後、退職を決めました。
努力が収入に反映されなかった
給与も理由のひとつです。
薬剤管理指導の件数は薬剤部内で最も多く出していました。病院が加算を算定するために資格も取りました。学会の費用は自腹でした。それでも給与は動きませんでした。
昇給は毎年わずかで、病院は赤字だったのでボーナスは年々減っていきました。成果と収入がつながらない場所に、10年近くいたことになります。
辞めてから約2か月、無職でした
退職した時点で、転職するか独立するかを決めていませんでした。2023年12月に辞めて、開業届を出したのは2024年3月です。その間は無職です。
収入が途絶える不安はありました。ただ、退職前からブログとWebライターの副業を少しやっていたので、ゼロにはなりませんでした。
もうひとつ、薬剤師には調剤という法律で定められた独占業務があります。最悪どこかで働けるという前提があったから、進路を決めないまま辞められました。実際、いまのところ何とかなっています。
この2か月を隠さずに書いているのは、独立が準備万端で踏み切れるものではなかったからです。
経歴
病院薬剤師として担当していた業務
勤務先は300床を少し超える規模の、地方都市の総合病院です。
- 病棟業務(主担当)
- がん化学療法
- 電子カルテの医薬品マスターメンテナンス
- 災害医療
資格
- 薬剤師
- 日病薬病院薬学認定薬剤師(2018年取得。その後更新していません)
- 日本DMAT隊員(隊員登録は5年ごとの更新制です。私の登録は2027年3月まで有効で、以降の更新予定はありません)
- 日商簿記3級
更新していない資格をそのまま書いているのは、更新しないという判断も含めてキャリアだと考えているからです。
なぜ薬剤師がIT事業をやっているのか
病院にいた頃からシステムを触っていた
経歴に「電子カルテの医薬品マスターメンテナンス」と書きました。薬の情報をシステムに登録し、現場で正しく動くように保守する仕事です。
薬剤師から突然IT業へ飛んだわけではなく、病院にいた頃から片足は入っていました。
在職中の2023年から、AIを仕事に持ち込んでいた
もともと新しい技術を触るのが好きでした。ChatGPTが公開されて間もない2023年初頭から、ブログの運営とWebライターの仕事に使い始めています。まだ病院に勤めていた頃です。
その後YouTubeを始めるときには、台本と構成と字幕の壁打ちに使いました。Claude CodeやCodexが登場してからは、これらの作業そのものを自動化しています。
好きで続けられること、手を動かして形にできること、そして医療と介護の現場にAI導入の需要があること。この3つが重なったので、IT事業を始めました。
法人にした理由は社会保険料と信頼度
事業を始めたことと、法人にしたことは別の判断です。2026年5月に法人を設立した理由は2つあります。
ひとつは、国民健康保険料が高額になってきたことです。社会保険に切り替えて負担を組み直したいと考えました。
もうひとつは、法人向けの案件や、自治体と国の補助金の申請では、個人事業主より法人のほうが信頼を得やすいと判断したことです。
薬剤師として入った現場から、IT案件が生まれた
薬剤師として契約している法人から、AIエージェントの構築を受託しました。
薬剤師として現場に入り、業務を見て、課題を見つけ、それを自分の会社で解決する。この流れが実際に成立したので、薬剤師とITの掛け合わせは机上の話ではないと考えています。
IT事業の主な対象は医療と介護と福祉です。他の業種も、依頼があれば受けています。
収入について
病院に勤めていた頃の額面年収は約520万円でした。独立1年目の売上は700万円台です。
この数字だけを見ると楽に稼いだように読めるので、稼働量も書いておきます。独立1年目は、多いときで週6日、長い日は1日10時間ほど薬剤師として働いていました。いまの週1〜2回を2件という稼働とは、まったく違う働き方です。
長い日は1日10時間
売上は700万円台
病院と老健の法人 週1〜2回
意図的に2件に絞っています
もうひとつ、売上は手取りではありません。ここから経費を引き、国民健康保険料と国民年金を納め、所得税と住民税を払った残りが手元に残ります。会社員の額面年収とそのまま並べて比べられる数字ではないので、独立後の収入を考えるときは売上と所得と手取りを分けて見てください。
−
経費
−
国民健康保険料
国民年金
−
所得税
住民税
=
手取り
会社員は社会保険料が労使折半で、税金も源泉徴収されます。フリーランスは全額を自分で負担し、自分で納めます。同じ「700万円」でも中身が違うのはこのためです。
そのうえで、これは私ひとりの、ある1年の数字です。フリーランスの収入は契約先の単価と稼働日数で大きく変わります。
このサイトで金額を出すときは、いつ時点の、何の数字かを必ず書きます。
こんな方に向けて書いています
読んでいる方がどの段階にいるかで、必要な情報はまったく違います。3つに分けました。
フリーランスの働き方
案件の取り方
逆に、短期間で大きく稼ぐ方法や、誰にでも当てはまる正解を探している方には、たぶん役に立ちません。ここにあるのは、ひとりの薬剤師が実際に通った道と、その過程で調べたことだけです。
このサイトで書くこと、書かないこと
| 書くこと | 書かないこと |
|---|---|
| 独立の判断材料(収入、契約、保険、税) | 契約先が特定できる情報 |
| 案件の取り方(派遣、単発、業務委託、直契約) | 出典を確認していない制度や点数の話 |
| 薬剤師にITを掛け合わせた働き方 | 誰でも稼げるという趣旨の話 |
妻も薬剤師で、転職を重ねて複数の職場を経験しています。転職やキャリアチェンジを扱う記事では、本人に確認したうえでその経験も書きます。
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